SNSのプロフィール欄に4文字のアルファベットを掲げる人が増えて久しいですし、当サイトにも16タイプの診断がいくつもあります。初対面の話題が血液型からタイプ診断に世代交代した、という実感のある方もいるでしょう。それにしても、人間は昔から人間を分類するのが好きすぎる。今日はその「分類したい欲」の歴史を、古代ギリシャから現代までざっと2000年ぶんたどってみます。
古代:人間は4種類だった
性格分類の最古参は、古代ギリシャに始まる四体液説です。人間の体には血液・粘液・黄胆汁・黒胆汁の4つの液があり、そのバランスで気質が決まる——多血質は陽気、粘液質は冷静、胆汁質は短気、憂鬱質は物思い、という具合です。医学としてはとっくに役目を終えましたが、「人間を少数の型に分けて理解する」という発想の原型はここにあります。英語で憂鬱を意味するメランコリーが「黒胆汁」に由来するように、言葉の中には今も化石として残っています。
つまり、タイプ分けは最新の流行ではなく、人類が2000年以上続けている遊びなのです。
20世紀:「内向・外向」の発明と、16タイプの誕生
現代のタイプ論の直接の先祖は、心理学者カール・ユングが1921年の著作で示した類型論です。ここで「外向・内向」という、いまや日常語になった軸が理論化されました。この考えに影響を受けたアメリカのブリッグス母娘が、人をより実用的に理解するための指標づくりに取り組み、質問に答えると4つの軸の組み合わせでタイプが決まる形式を生み出します。2×2×2×2で16。ここに「16タイプ」という魔法の数字が誕生しました。
なぜ16がちょうどいいのか。4種類では大雑把すぎて自分だけの感じがせず、256種類では覚えられない。16は「自分は特別」と「仲間がいる」が両立する絶妙なサイズなのだと思います。ちなみに、こうした自己申告式のタイプ分けは性格を測る科学的な検査というより自己理解のための枠組みであり、結果が日によって変わることも珍しくない——という点は、心理学の側からたびたび指摘されてきました。ここは覚えておきたい注意点です。
現代:タイプは「プロフィール」になった
そして現代。無料のウェブ診断の登場で、16タイプは一気に世界の共通語になりました。タイプ名で検索すれば相性表から「あるある」まで無限に出てきて、タイプはもはや性格の説明というより、出身地や星座と並ぶプロフィールの一項目です。
この流行の背景には、自己紹介がうまくなりたいという切実さがあると思います。「私はこういう人間です」をゼロから言葉にするのは大人でも難しい。タイプという既製品の言葉を借りれば、自分の輪郭をとりあえず相手に手渡せます。会話はそこから始めればいい。タイプ診断は、性格の測定器というより自己紹介の補助輪として愛されているのではないでしょうか。
16タイプだけじゃない——分類法の見本市
性格の分類法は、16タイプのほかにもいろいろな系統があります。9つの性格タイプに分ける「エニアグラム」は自己啓発や研修の分野で長く使われてきましたし、動物や色にたとえるカジュアルな診断も星の数ほどあります。系統は違えど、「少数の型+わかりやすいラベル」という骨格は共通です。
一方、現代の心理学研究で性格を扱うときの主流は、実はタイプ分けではありません。「ビッグファイブ」と呼ばれる考え方では、外向性・協調性・誠実性・神経症傾向・開放性という5つの軸の上で、人を「型」ではなく「度合い」で捉えます。身長に「高い型と低い型」の2種類があるのではなく、連続した数直線があるのと同じ発想です。
なぜ度合いのほうが研究向きなのに、世間ではタイプが勝つのか。答えは単純で、「外向性62点」より「あなたは冒険家タイプ」のほうが圧倒的に覚えやすく、語りやすいからです。正確さと親しみやすさはトレードオフの関係にあって、娯楽の診断は親しみやすさの側に立っている——この構図を知っておくと、タイプ診断との距離感がちょうどよくなります。
職場や学校でタイプを使うときの注意書き
タイプ診断が広まった結果、チームビルディング研修や自己紹介シートでタイプを書かせる場面も増えました。相互理解のきっかけとしては便利な道具ですが、使い方には注意書きが要ります。
まず、採用や配属や評価のような、人の人生に関わる判断の根拠にしないこと。自己申告式のタイプは受けるたびに変わりうるもので、その日の気分で変わる値を人事の物差しにするのは、伸び縮みする定規で身長を測るようなものです。次に、タイプの開示を強制しないこと。自分をどう説明するかは本人が選ぶことで、「◯◯タイプだから この仕事ね」という割り振りは、便利さを装った決めつけになります。
いちばん健全な使い方は、タイプを話の入口にして、その先は本人の言葉を聞くことです。「慎重タイプって出たけど、実際どう?」——この一言があれば、タイプは檻ではなく会話のドアノブとして働きます。道具の性能は、結局のところ持ち手しだいです。
日本の「分類ブーム」小史——動物占いからプロフィール帳まで
タイプ分けへの愛は、日本でも独自のブームを何度も起こしてきました。年配の世代なら血液型ブームを、平成育ちなら1990年代末に大流行した動物占いを覚えているはずです。生年月日から12種類の動物に分類するあの占いは、書籍がベストセラーになり、職場や合コンの定番の話題になりました。「私、ひつじなんだよね」で会話が始まる時代が、確かにあったのです。
学校文化の中では、プロフィール帳や心理テスト本が分類遊びの入口でした。休み時間に回ってくる「森で最初に出会う動物は?」のような心理テストは、深層心理という名の分類ゲームです。雑誌の巻末占い、朝の星座ランキング、ゲームの性格診断コーナー——日本の生活には、タイプ分けの装置が常にどこかに組み込まれてきました。
こうして見ると、現代の16タイプブームは黒船というより、血液型→動物占い→心理テストと続いてきた在来の分類文化に、新しい選手が加入した形に見えます。分類の中身は時代ごとに入れ替わっても、「手軽なラベルで自分を語り、人とつながりたい」という欲求のほうは、ずっと変わっていません。
上手な付き合い方:タイプは檻ではなく、とっかかり
ただし補助輪には、頼りすぎると外せなくなるという性質があります。「私は◯◯タイプだから無理」と挑戦をやめる根拠にしたり、「あの人は△△タイプだから」と決めつけの道具にしたりし始めると、タイプは自分と他人を閉じ込める檻になります。
おすすめの距離感は、タイプを「とっかかり」として使うことです。結果を読んで、当たっている部分としっくりこない部分を仕分けてみる。しっくりこない部分こそ、既製品の言葉に収まらないあなたのオリジナルの部分です。半年後にもう一度やって、変わっていたら、それはあなたが変わった記録になります。
当サイトの16タイプ診断も、そういう気持ちで作っています。恋愛の距離感のクセなら恋愛こじらせ診断、音楽の聴き方から見るなら音楽人格タイプ診断、心の年齢を測るなら精神年齢診断。タイプ名を古典の言葉でつけてほしい方には徒然草診断という変化球もあります。ぜんぶ無料なので、診断ポータルから気になるものをどうぞ。2000年続いた人類の遊びに、今日も気軽に参加してください。