「何座?」と聞かれて答えられない日本人は、ほとんどいません。でも「じゃあ、なんであなたはその星座なの?」と聞かれて答えられる人は、ぐっと減ります。誕生日と星座の対応表は、いったい誰が、何を根拠に作ったのか。今日は星占いの土台になっている12星座の仕組みを、数千年さかのぼって見に行きます。

星座のふるさとは古代メソポタミア

星空を区画に分けて意味を読む発想のふるさとは、古代メソポタミア、バビロニアの天文学です。この地の観測者たちは、太陽や月や惑星が 空の決まった帯の上を移動することに気づきました。この帯——太陽の通り道を「黄道」と呼びます——を12の区画に等分し、それぞれに星座を割り当てたのが、黄道十二宮の始まりです。

なぜ12なのかといえば、1年でおよそ12回の新月が巡る、つまり暦が12か月だったから。空の区画を暦と揃えたわけです。この体系がギリシャに伝わって精緻化され、「おひつじ座に始まりうお座に終わる」おなじみの並びが整いました。私たちが合コンで使っている12星座は、数千年前の天文学者たちの観測の遺産なのです。

あなたの星座は「生まれた日の太陽の住所」

では、自分の星座はどう決まっているのか。答えはシンプルで、あなたが生まれた日に、太陽が黄道十二宮のどの区画にいたか、です。星占いでいう誕生星座は、正確には「太陽星座」と呼ばれます。

たとえば、しし座の期間に生まれた人は、その日、地球から見て太陽がしし座の宮の方向にあった人。つまり星座とは、あなたが生まれた瞬間の太陽の住所のようなものです。夜空で自分の星座を探しても誕生日の頃には見えない——というのは星好きには有名な話で、当然です。自分の星座の方向には太陽がいるので、その星座は昼の空に昇っており、星は見えません。自分の誕生星座がきれいに見えるのは、誕生日のおよそ半年後の夜。ちょっといい話だと思いませんか。

「13星座騒動」の真相——星座と宮は別物

ときどきニュースやSNSで「本当の星座は13個あった」「あなたの星座は実はひとつずれている」という話題が沸き上がります。いわゆる、へびつかい座騒動です。あれの真相を整理しておきましょう。

天文学上の星座の境界線で見ると、黄道は確かに13個目の星座・へびつかい座も通ります。さらに、地球の自転軸が長い年月でゆっくり首を振る「歳差」という現象のせいで、実際の星座の位置は数千年前から少しずつずれてきました。ここまでは天文学の事実です。

一方、星占いで使う十二宮は、実際の星の並びではなく、春分点を起点に黄道を12等分した「区画」を使う体系が主流です。つまり占星術の「宮」と天文学の「星座」は、名前は同じでも別の座標系。だから「天文学的には13星座」という指摘は正しく、同時に「星占いの体系は12宮のまま」というのも一貫している——両者は矛盾せず並立している、というのが騒動の種明かしです。定期的にこの話題で世界がざわつくのは、もはや風物詩と言えます。

新聞の星占いは、意外と最近の発明

星座そのものは数千年ものですが、「今日のおひつじ座は◯◯運が好調!」という形式の大衆向け星占いは、ぐっと新しい文化です。生年月日だけ、それも太陽星座だけで占う簡易形式は、20世紀に新聞や雑誌の連載を通じて世界中に広まりました。本格的な占星術が生まれた時刻や場所まで使って複雑な計算をするのに対し、12分の1の手軽さで毎日楽しめるのが太陽星座占いの発明でした。

朝の情報番組の星座ランキングに一喜一憂する文化は、数千年の天文学と、20世紀のメディアの合作というわけです。ラッキーアイテムが「青いハンカチ」だったりするのは完全に現代の演出ですが、その根っこにバビロニアの夜空があると思うと、朝の30秒がすこし豪華に感じられます。

火・地・風・水——12星座の中の「4チーム」

星占いの記事を読んでいると、「火の星座」「風の星座」という言い方に出会います。これは占星術の伝統的な分類で、12星座を4つのエレメント(元素)に3つずつ振り分けたものです。

  • 火の星座(おひつじ座・しし座・いて座): 情熱、勢い、直感のチーム。思い立ったら動くタイプの象徴とされます
  • 地の星座(おうし座・おとめ座・やぎ座): 現実、堅実、五感のチーム。形のあるもの、続くものを大切にする象徴です
  • 風の星座(ふたご座・てんびん座・みずがめ座): 知性、言葉、交流のチーム。情報と会話でつながる象徴とされます
  • 水の星座(かに座・さそり座・うお座): 感情、共感、直観のチーム。心の機微を扱う象徴です

古代ギリシャの「世界は火・地・風・水でできている」という四元素の思想を、星座の並びに重ねたのがこの分類です。12個の星座を覚えるのは大変でも、4チームなら把握できる——という点で、これは占星術界の実によくできたユーザーインターフェースだと思います。相性占いで「火と風は相性がいい」(火は風で燃え広がる)のように語られるのも、この元素のイメージ連想が土台です。科学というより詩の体系ですが、詩としてはかなり整っています。自分と友人のエレメントを調べて、チーム分けの妙を味わってみてください。

星座は「空とつながる口実」

星占いに科学的な予知力があるわけではありません。それでも星座の文化が数千年続いているのは、これが「自分と空をつなぐ物語」だからだと思います。自分の生まれた日に太陽がいた場所に名前がついていて、同じ名前を持つ仲間が世界中にいる。夜空を見上げて「あのへんが私の星座」と言える。この所属感は、当たる当たらないとは別の価値です。

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